指導部より

Ⅰ.監督の交代について

9月の北日本学生馬術大会終了後の北大馬術部の役員交代と合わせて、指導部では市川瑞彦(S38)が監督を辞任し、後任に江口遼太(H25)が就任しました。この監督交代は、先立って指導部内で了承を得たのち部長に提案され、部長により了承されました。

江口遼太氏には獣医学部博士課程在学中から指導部からの依頼により新馬調教に協力いただいてきました。彼はこれまで、北響(カノンコード)、北暁(ノーステア)、北汐(タイダルベイスン)、北陽(ノガロ)などを調教され、いずれも順調に調教が進んでおり、その功績は大きなものがあります。

彼は幸い今春から獣医学部の助教のポストにつくことが内定しましたので、昨年暮れに指導部メンバーに参加していただきました。現役部員にとっては、監督にはできれば現役と世代があまり離れていない人が望ましいと私は感じてきましたので、この度監督就任をお願いした次第です。

これにより現役とのコミュニケーションの改善も期待できると思っています。彼からしますとこれまでと立場は変わりますが、やることは実質的にこれまでと変わるわけではありません。

Ⅱ.これまでを振り返って

この機会に簡単にこれまでの活動を指導部の立場から振り返っておきたいと思います。詳細については、各年度の部報や馬術部HPに掲載の「指導部報告」などを参照していただきたいと思います。

1) 指導部発足のいきさつ

      

2013年終わりごろ、(当時の)馬術部活動について憂慮する声がOBから寄せられ、もはや現役に任せておく段階は過ぎており、OBが関与する必要があるとの声が上がりました。そのため、OB有志が呼びかけ、議論が行われてきました。

その当時問題点として挙げられたのは、

       馬術部の施設は公的施設であるが、部と部外の人・組織・企業との関係がそれを踏まえて適切に行われているか、
       装蹄依頼先の変更が行われたが、その際に適切な事情説明、手続きがなされたか、
       主力の人馬が1か月も札幌を離れて合宿するのは、本拠地の部員、馬がおろそかになり、部活動として適当なのか、
       自馬の年齢構成は老齢馬が多くアンバランスで、一方新馬調教がうまくいっていない。現役だけでは新馬調教を行うのは無理ではないか、
     

などでした。

紆余曲折を経て、2014年10月、北大馬術部にも監督以下の指導スタッフ(以下、指導部と記す)をおくこととなり、市川瑞彦(S38、監督)、近藤喜十郎(S41、監督補佐(乗馬技術))、堤英世(S46、監督補佐(厩舎管理)、川崎洋史(H12、監督補佐(馬体管理))が就任しました。2018年末頃から江口遼太(H25)が加わっております。

2) 指導部の直面した問題 ― コミュニケーションの改善

      

発足当初の最大の問題は、如何にして現役とのコミュニケーションを確立していくかということでした。内容としては、指導部と現役とのコミュニケーションに加え、若いOBと現役とのコミュニケーションの改善の問題があったと思います。

「現役部員の立場」からすれば、いままで自分たちがアルバイトで活動資金を稼ぎ、学生主体で活動してきた事実があるわけで、これにどこが問題なのか、指導部なんて要らない、要るとしても自分たちで選びたい、などと思っても不思議はないわけです。また、これからお仕着せの指導部が何をするか、現役にどういう制約が加わるかという警戒心もあったかと思います。また、当時の現役と若いOBの間には断絶の壁があり、その壁は現役側からつくっていたと聞いています。このような状態では問題点の解決、特に新馬調教には、OBの協力が不可欠と思われますので、改善が望まれていました。

そのためには、まずは現役とのコミュニケーションの改善を図ることが最優先と考え、指導部が何をしようとしているのかを、まず指導部内で共有するため文章化したらどうかという意見が出され、これは「指導部の考え方」として文章化しました。これを現役との懇談会で現役にわかってもらうための説明に使いました(また同時に、OBにもわかっていただくため、部報や馬術部HP「指導部から」の欄に掲載させていただきましたので、ご覧ください)。

3) 繋養馬の入離厩

      

2014年秋以来、原則として練習にしか使えない「純練習馬」を2年以内に解消し、部馬の構成を年齢構成も含めて適正なバランスに修正するとの方針に基づき(実際には「緊急避難」として例外を認めざるを得ないと判断したケースもありましたが)、繋養馬の入離厩を進めてきました。

その具体的な内容は、

       借用馬の返却 (タフィー、ロベルクランツ)、
       調教上・馬体上の理由による離厩 (ビービーバンス、ピュアメモリー、北咲(チェルシー)、メイショウウズシオ)、
       高齢による離厩 (ペリエE、チェリーアドミラル、北焔(ファイアマリオ)、北菓(ログキャビン)、北創(サクラスペリオール))、
       練習馬としての入厩 (サクラロミオ、メイショウウズシオ)
     

などです。これらにより年齢的にはかなり繋養馬の若返りが図られたと思います。

      

新馬としてはノーザンホースパークのご好意と、川崎氏の骨折りで有望な馬(カノンコード、タイダルベイスン、北稜(ダノンアンチョ)、ノーステア、北琉(ドラゴンケーニッヒ)、ノガロ)が入厩し、かなり将来が期待できる陣容になってきたと思われます。

これらの馬は若いOB(江口遼太(H24)、小山寛(H26)、笹原良平(H26)、中津裕太(H28)、高橋春奈(H30)、杉田優(H30)等の諸氏)により調教されてきましたが、おおむね順調に進んできていると思われます。

4) 現役とのコミュニケーション - 改善、停滞、劣化

      

部が組織として正常に機能していくためには、当然のことですが、その前提として「部長―指導部―現役のライン」の間でコミュニケーションが十分とられていなければなりません。

具体的に言えば、部長―指導部、指導部―現役の間で、適切なホウレンソウ(報告・連絡・相談)がなされていなければなりません。指導部が発足して間もない頃は、特にビービーバンスの離厩問題を巡って、経緯の解釈や見解の相違で現役と対立したりもしましたが、時間の経過とともに経験を共有する中で、次第にコミュニケーションが改善され、相互理解が深まっていったのではないかと思われます。

事実、記録で見ますと最初の2年間の間は年5回ほど「指導部―現役」ミーティングが開かれています。しかし、最近になると2年前には年2回となり、ここ1年間は現役側の時間がとれないという理由で、1回しか開かれませんでした。その結果、事実問題として、事前に相談がない、連絡がない、報告がないという事態が発生しました。
確かにシーズン中は行事が詰まっていて、時間の調整も容易でないのは事実です。また何も、コミュニケーションの手段は「指導部―現役」ミーティングだけではなく、個人間のコミュニケーションでもいいのも事実です。

しかし、実際には「指導部―現役」でコミュニケーションがとれていなければ、OB個人-現役個人間のコミュニケーションもとれていないように思います。OB側でも馬場に顔を出しても自分たちが現役から必要とされていないと感じれば自然と足が遠のくことになるでしょう。

新しく代替わり迎えて、現在まで1回目の「指導部―現役」ミーティングが開かれました。江口監督の下で現役とのコミュニケーションの再構築の努力が図られつつあります。今後一層ホウレンソウを再構築していく努力を指導部と現役の双方がしていかなければならないと思います。

5) 部員の減少、財政困難、部員構成のひずみ

      

最近5年ぐらいでみますと、入部する部員は10数名程度で、最上級生になると(昨年を除いて)、1-3人しかいなくなるという状況になっています。

部活動では、基本的には「数は力」の面があり、部員が少ないと財政面でも、マンパワーの点でも、雰囲気という面でも、活気を失うなど問題が多いと思います。

数が少ない学年は、OBになってもいろいろな面でその影響を及ぼします。この点から最近退部する部員が多いのも気がかりな点です。

その原因は、

       生活習慣の面(朝早く起きられない)、
       学業の面(授業出席率・成績を上げなければ希望学部・学科に進学できない)、
       経済的な面(個人的な出費が重い、生活費を稼ぐアルバイトの時間がない)、
       部活動内容の面(部のアルバイトが多くて大変、競技志向にはついていけない、乗馬経験があって技術的にも十分大会に出場できても、出場意欲がない)、
       家庭の事情(家庭の経済事情、両親からやめるよう説得された)
     

など多岐にわたっているように思われますが、理由を特定するのは困難のように思われます。

この部員の減少は、北大のみならず関東・関西を含め全国的な傾向で、一般に大学運動部にとっては困難な時代にあるように思われます(例えば、昨年の国立7大学戦の折に聞きましたら、九大馬術部は部員7人、馬3頭とのことでした)。

昨年秋、このような中で北大馬術部の財政が極めて困難な状況にあることが突然明らかになりました。その結果、支出削減のため繋養馬の頭数を減らす必要に迫られ、やむなく8頭に減らさざるを得ませんでした。

一方で、このため、財政的にもマンパワーの面からも新入部員勧誘活動に力を注ぎ、多数の新入部員を獲得する必要性が強調されました。幸い、高野氏作成のポスターの影響もあったと思われますが、勧誘活動は功を奏し、28名という多くの新入部員を迎えることができました。

しかし、この歓迎すべき事態は、同時に数少ない上級生・馬で多くの新入生を指導しなければならないという部員・部馬構成のひずみを露呈させました。上級生も新入部員の練習日を分けるなど対応をとっているようですが、目が行き届かない、自分の練習時間が十分にとれないなど問題を抱えています。

いずれにしても、これらは構造的な問題ですので急にすべてを解決することは困難で、いまの1年生が3年生になるぐらいまでなんとか辛抱してやっていかなければならないかと思います。

現在江口監督を中心として若手OBの力も借りながら、指導部は現役部員とのコミュニケーションの再構築、新馬の乗りなおし、有効な練習方法などを模索しつつあります。

OBの皆様にはご理解とご協力をよろしくお願いしたいと思います。

以上
 

(2019-10-26 文責 市川 瑞彦)


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