(平成27年度部報から転載)

指導部より

昨年10月指導部が発足してから1年あまりが経過しました。部報紙上をお借りして活動を報告させていただきます。

Ⅰ.指導部発足のいきさつ

2013年終わりごろからだったでしょうか、(当時の)馬術部活動について憂慮する声がOBから寄せられ、もはや現役に任せておく段階は過ぎておりOBが関与する必要があるとの声が上がりました。そのため、OB有志が呼びかけ、議論が行われてきました。途中からこの集まりは部長が招集する懇談会という形で行われ、時により当時の現役部員にも出席を求めて開かれてきました。1年以上に亘り、概ね1-2か月に1回程度、合計10回前後開かれたと思います。詳しくは部長から報告があるかもしれませんので、以下に簡単に記します。

その当時問題点として挙げられたのは、

    1)  部の施設に対する認識
      馬術部の施設は税金で賄われている公的施設であり、部と部外の人・組織・企業との関係がそれを踏まえて適切に行われているか、;
    2)  装蹄依頼先の変更での問題
      装蹄依頼先の変更が行われたが、その際に適切な事情説明、手続きがなされたか、
    3)  合宿のありかた
      主力の人馬が1か月も札幌を離れて合宿するのは、本拠地の部員、馬がおろそかになり、部活動として適当なのか、
    4)  自馬構成
      自馬の年齢構成がアンバランスで老齢馬が多く、一方新馬調教がうまくいっていない。現役だけでは新馬調教を行うのは無理ではないか、

などでした。

紆余曲折の議論を経て、昨年10月、北大馬術部にも監督以下の指導スタッフをおくこととなり、市川瑞彦(S38、監督)、近藤喜十郎(S41、監督補佐(乗馬技術))、堤秀世(S46、監督補佐(厩舎管理)、川崎洋史(H12、監督補佐(馬体管理))が就任しました(以下、これら指導スタッフを指導部と記します)。

なお、この間に学生馬術連盟の規則に変化がありました。平成27年度より全日本学生馬術連盟加盟の大学馬術部では責任者として監督(コーチ)をおかなければならないこととなったことです。これは安全面での責任の所在を明確にするためと思われますが、いわばすべての大学で広い意味で「指導部」を置かなければならなくなったということもできましょう。

Ⅱ.指導部の直面した問題

   1)  現役とのコミュニケーションの改善
     発足当初の最大の問題は、如何にして現役とのコミュニケーションを確立していくかということでした。Ⅰ.で述べた問題点は、あくまで「OBの立場」から見た問題点であって、「現役部員の立場」からすれば、いままで自分たちがアルバイトで活動資金を稼いで、学生主体で活動してきた事実があるわけで、これまでの活動に何の文句があるのか、どこが問題なのか、指導部なんて要らない、要るとしても自分たちで選びたい、などと思っても不思議はありません。また、これからお仕着せの指導部が何をするか、現役にどういう制約が加わるかという警戒心もあり得るでしょう。高学年の部員が少ない(3年2人、2年3人)こともあり、指導部の活動がきっかけで新たな混乱が生じたりしたら部の存続にも関わり、我々も責任をとれません。まずはそのため、現役とのコミュニケーションの改善を図るのが最優先と考えました。指導部が何をしようとしているのかを、まず指導部内で共有するため文章化したらどうかという案が出され、「指導部の考え方」として文章化しました。これを現役との懇談会で現役にわかってもらうための説明に使いました。また同時に、OBにもわかっていただくため、「北大馬術部後援会報」に掲載させていただきました。読まれた方も多いかと思いますが、資料として再掲させていただきました。
   2)  現役と若いOBの関係の断絶
     当時の現役とOBの間には断絶の壁があり、その壁は現役側からつくっていたと聞いています。このような状態ではⅠ.で述べた問題点の解決、特に新馬調教には、OBの協力が不可欠と思われますので、改善が望まれました。
   3)  発足当初すでに決まっていたこととの接続
     指導部の発足以前に決まっていた問題にどう対処するかも問題でした。例えば、新馬調教者、退厩馬などです。これに関しては、指導部が発足した以上、すでに決まっていることにも遡って、方針に従わせるべきだという意見が一部のOBから出されました(特に、ビービーバンスの離厩に際して)。その考え方は正しい方針とも言えるかと思いますが、さきに述べた「現役とのコミュニケーションの改善」を最優先にし、強い対応は控えました。

Ⅲ.この1年の活動

「指導部の考え方」に記しましたように、活動の主体は現役部員であることはいうまでもありません。指導部が権限をもつのは、その年の現役部員には責任がもてず後年の部員にも「長期間に亘って影響を及ぼす」問題です。具体的には、「繋養馬の出し入れ」と「新馬調教」です。その他指導部の指導・助言が特に必要と考えているのは、乗馬技術、練習方法、厩舎管理などです。以下にこの1年指導部の活動を報告します。

1) 部馬の動静

「指導部の考え方」に記されているように、"指導部の目標として、練習にしか使えない「純練習馬」を2年以内に解消し、部馬の構成を年齢構成も含めて適正なバランスに修正したい"との方針に基づき部馬の入退厩を判断しましたが、「緊急避難」として認めざるを得ないと判断したケースもありました。
       タフィー
         借用馬は基本的にはおかないとの指導部の考えに基づき返却した(11月8日)。
       ビービーバンス
         前述のように、指導部発足以前に決まっていたため離厩を承認(11月29日)。
       ペリエE
         老齢化による離厩(11月29日)。
       サクラロミオ(9歳)
        現役から新入部員の入部に使える馬が足りないとの要望を受け、「緊急避難」として練習馬として再入厩を承認し、フロンティア乗馬クラブから再入厩(5月31日)。
       カノンコード(9歳)
         練習馬としても期待できると考え、ノーザンホースパークから入厩(4月7日)。
       ロベルクランツ(6歳)
         現役から新入部員の入部に使える馬が足りないとの要望を受け、「緊急避難」として練習馬として借用を承認し、入厩(2015-5月-31)、契約通り11月末をもって返却(11月29日)。
       タイダルベイスン(5歳)
         未調教馬、川崎氏の紹介で入厩(7月9日)。
       ダノンアンチョ(8歳)
         ノーザンホースパークから入厩(8月31日)。
       ノーステア(7歳)
         ノーザンホースパークから入厩(12月5日)。

Ⅳ.ミーティング

指導部内、現役と指導部、新馬調教者の間で必要に応じて呼びかけ、話し合いがもたれてきました。

1) 指導部会議

指導部内の意見交換は、4人が全員集まることは難しいため、日常的な相互連絡はメールによって行っています。指導部会議は全員そろう機会をとらえて行いました。全員が揃わない時は3人で行った時もあり、お互いの意思疎通は概ね良好と考えています。この1年ほどの間に6回、ほぼ2カ月に一度開かれました(10月11日(土)、11月30日(日)、1月23日(金)、2月14日(土)、3月20日(金)、8月23日(日))。

2) 現役と指導部の間の懇談会

必要に応じ指導部あるいは現役側から提案し、随時懇談会がもたれてきました。内容は指導部からは、「指導部の考え方」の説明、部馬の入退厩管理、練習方法の修正の提案など、現役側からは馬配、調教の年間目標の提示などが主なものでした。これまで6回、おおむね2カ月に一度開かれてきています(10月10日、12月7日、2月14日(土)、4月2日(木)、5月31日(日)、7月19日(日)、10月17日(土))。
この他、最近では新馬調教者OBの間で「新馬調教担当馬の組み替えについて」の話し合いも行われました(10月17日(土)、指導部同席、現役はオブザーバーとして同席)。

Ⅴ.おわりに

指導部が発足して間もない頃は、特にビービーバンスの離厩問題を巡って、経緯の解釈や見解で現役と対立したりしましたが、時間の経過とともに経験を共有する中で、次第にコミュニケーションが改善され、相互理解が深まってきたのではないかと思われます。

この1年で老齢馬の離厩が進み、代わりにノーザンホースパークの好意と、川崎氏の骨折りで有望な4頭の馬(カノンコード、タイダルベイスン、ダノンアンチョ、ノーステア)が入厩しました。これらの馬と、先に入厩していた若い馬(北スイ(アップヒルティガー)、チェルシー、北鷹(シュガーシャック))と併せて考えると、かなり将来が期待できる陣容になってきたと思われます。

これらの馬は現在若いOB(江口遼太(H24)、小山寛(H26)、中津裕太(H28))の諸氏により調教されており、おおむね順調に進んでいると思われます(北スイの調教に従事していた笹原良平(H26)氏は退任、ご苦労様でした)。調教を担当する若いOBの間でも騎乗馬の組み替えを話し合うなど、有機的な調教体制がつくられつつあるように思われます。全体として、現役、新馬調教に携わる若いOB、指導部の相互間のコミュニケーションがよくなり、系統性も改善されつつあるように思われます。

残されている問題としては、次のような点があげられるかと思います。

    1. 依然として上級生部員が少なく、将来的に新馬調教に携わる人材の枯渇が心配な点があります(下級生部員の中から競技選手を指向し、技術向上に意欲をもつ部員が多く現れることを期待したいと思います)。
    2. 練習方法をさらに系統だったものに改善していくこと。
    3. 「合宿」について現役と議論を進め、練習方法の体系とさらに整合性のあるものにしていくこと。ここで、「合宿」とは「個人が部を離れて他の乗馬施設で馬に乗ったり、指導を受けたりして過ごす」ことを指しますが、これと同時に部員が一定期間寝食をともにしながら過ごす通常の合宿についても検討すること。

(文責 市川 瑞彦)


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