ポプラ並木余話
台風が残したチェンバロの音色
北大馬術部後援会ホームページ制作委員会
北大馬術部員にとってポプラ並木はある時期、青春の一部でした。部室そのものがポプラ並木のそばにあり、並木の青草刈りは部員の日常だったし、並木につながれた馬は大木の周りの草を食んで雑草刈りに一役かっていました。2004年秋の台風で半分ほどが倒れたと知ったとき、馬術部のOBから基金に一役かいたいと自然発生的に募金運動が起きたのもそうした思い出のなせる業でした。
倒れたポプラの樹からチェンバロが生まれ、演奏会が開かれた時弾いたのはクラーク博士の「Boys,be ambitious!」の言葉を書き残した札幌農学校一期生ゆかりの女性というのも不思議な縁です。
WEB時代、台風襲来から、チェンバロに再生されるまで刻々と伝える記録がインターネット上に残されています。その軌跡をリンクでたどります。
まず、平成17年(2004年)9月8日襲った台風18号でポプラ並木が次々倒れる様子をム-ビーで記録した画像。かつて馬術部があった方角から撮影されています。
「北海道大学 情報科学研究科 知識メディアラボラトリ LivePoplar」
http://km.meme.hokudai.ac.jp/cgi-bin/wiki.cgi/Japanese?page=LivePopla
倒れたポプラの惨状を伝えるサイト
「北海道大学大学院理学研究科附属地震火山研究観測センター 寺田暁彦のページ」 2004年台風18号 北海道大学「ポプラ並木」被害(2004/9/8)
http://uvo.sci.hokudai.ac.jp/staff/terada/2004-18/index.html
「北海道大学仮想散歩」
http://circle.cc.hokudai.ac.jp/vrmap/Articles/2004Poplar/
倒れた木から、ついたてとベンチになるものもありました。
「北海道立林産試験場 林産試だより2005年7月号」
台風被害木から作ったついたてとベンチ
http://www.fpri.asahikawa.hokkaido.jp/dayori/0507/1.htm
そんななかでチェンバロにすればポプラ並木の音色がいつまでも残るというアイデア
が生まれ、埼玉県のチェンバロ製作者のもとまで運ばれました。
チェンバロができるまでのいきさつ
「さっぽろサイエンス観光マップ (この道は、ポプラチェンバロの道-北海道大学科学技術コミュニケーター養成ユニット(CoSTEP)受講生制作)
http://d.hatena.ne.jp/costep_webteam/20060930
完成したチェンバロをぜひ弾かしてほしいという日本では珍しいチェンバロ奏者の女性が現れクラーク会館で記念演奏会が開かれることになりました。それを伝える朝日新聞です。
ポプラ並木が倒れてから2年後の平成18年9月8日に、チェンバロ完成記念コンサートが北大クラーク開館で開催されました。演奏者に若きチェンバリスト、水永牧子さんをお迎えし、会場に詰めかけた500名以上の市民や卒業生を前に、恵迪寮歌「都ぞ弥生」など7曲が披露されました。水永さんの高祖父(祖父の祖父)は札幌農学校1期生の大島正健であり、クラーク博士の直接の教え子として「Boys,be ambitious」という博士の言葉を初めて紹介しました。演奏会場には大島正健ゆかりの方々をはじめ、クラーク博士の子孫であるベンジャミン・サリバン氏や佐藤昌介初代総長の子孫のキーン昭子さんも来場され、北大創基130周年の節目の年にふさわしい演奏会となりました(リサイタルの模様を伝える北大博物館のホームページから=下でも紹介)。
基金に対する北大総長のお礼の言葉が北大のホームページにあります。
「北海道大学ポプラ並木の再生に向けて」
http://www.hokudai.ac.jp/bureau/socho/aisatu/poplar20041215.html
と、経緯を説明する北大博物館のホームページから
「ポプラで作ったチェンバロによる小さな小さな演奏会」
http://www.museum.hokudai.ac.jp/exhibition/chembalo/chembalo.html
ポプラのチェンバロ
「ポプラのチェンバロ」は,平成16年の台風18号で倒れた北海道大学のポプラ並木のポプラを材料に作られました。バロック風の静謐な佇まいのチェンバロですが、その鍵盤の一つひとつには、ポプラ並木の再生を願う人々の熱い想いがこめられています。
ポプラ並木は、明治36年(1903年)に植林されて以来、樹齢100年に至る今日まで本学のシンボルとして学生や市民に親しまれてきましたが、台風18号の突風により半数近くが倒壊しました。倒れたポプラの惨状に多くの人々が落胆しましたが、すぐにポプラ並木の再生を願う声が全国から寄せられ、その声に後押しされた北大はポプラ再生事業に着手しました。世界にも例を見ない30トンにもおよぶ倒木2本を立て直すというプロジェクトが成功したのも、皆様からいただいたご支援の賜です。
その一方で、倒れたポプラ並木を木工品として蘇らせるというプロジェクトも進められ、多くの方々のご協力により、ポプラは様々な工芸品に生まれ変わりました。その代表作が、チェンバロです。
チェンバロ製作のご提案は、北海道教育大学の市川信一郎教授からいただきました。昔のヨーロッパではポプラがチェンバロなど楽器の材料に使われていたこともあったそうですが、現代では珍しい試みといえます。
チェンバロの製作は、横田ハープシコード工房の横田誠三さんにお願いし、完成まで2年の歳月が費やされました。北大のキャンパスカラーの緑色で縁取りされたチェンバロは、100年を生きたポプラの深みが感じられる、素晴らしい出来映えとなっています。
ポプラ並木が倒れてから2年後の平成18年9月8日に、チェンバロ完成記念コンサートが北大クラーク開館で開催されました。演奏者に若きチェンバリスト、水永牧子さんをお迎えし、会場に詰めかけた500名以上の市民や卒業生を前に、恵迪寮歌「都ぞ弥生」など7曲が披露されました。水永さんの高祖父(祖父の祖父)は札幌農学校1期生の大島正健であり、クラーク博士の直接の教え子として「Boys,be ambitious」という博士の言葉を初めて紹介しました。演奏会場には大島正健ゆかりの方々をはじめ、クラーク博士の子孫であるベンジャミン・サリバン氏や佐藤昌介初代総長の子孫のキーン昭子さんも来場され、北大創基130周年の節目の年にふさわしい演奏会となりました。
なお、チェンバロには、ラテン語で下記の銘文が刻まれています。
ポプラこの古の大志、札幌の地に育まれ
2004年 嵐によって倒れ
2006年 ここに蘇る
演奏者、水永牧子さんの報告サイトもあります。
チェンバリスト水永牧子 公式サイト
「北海道ポプラチェンバロレポートby Makiko」
http://neige.fem.jp/makiko-mizunaga/hokudaicem2.htm
ポプラチェンバロ演奏会無事終了しました
ご来場いただいた皆さま、ありがとうございました
~北海道大学「ポプラのチェンバロ」演奏会~
9月8日(金)開場 18:00 開演 18:30
演奏曲目
D.スカルラッティ:「3つのソナタ」K144 ト長調,K27 ロ短調,K141 ニ短調
J.S.バッハ:フランス組曲 第5番 ト長調
北大にちなんだメロディー ほか
会 場 北海道大学クラーク会館(札幌市北区北8条西8丁目北大構内)
<過去のニュース>
ポプラチェンバロうぶ声コンサートの模様が再放送されました!
TV :6月14日(水)14時台の「お元気ですか日本列島」(全国放送)
ラジオ:6月14日(水)18時~18時50分までのラジオ第一放送「ラジオ夕刊」 周波数は594MHz(全国放送)です。
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Message From Makiko
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2006年9月8日、北海道大学でチェンバロを演奏させて頂くことになりました。
北大(その前身は札幌農学校)というと、「Boys, be Ambitious! 少年よ、大志を抱け!」
の言葉を残したクラーク博士で有名ですが、2004年同大学のポプラ並木が台風で倒れ、チェンバロに生まれ変わることになりました。
同大学の平井卓郎教授の指揮のもとポプラの修復作業がすすめられる中、「ポプラをチェンバロにしてはどうか」
と北海道教育大学旭川校の市川信一郎教授が発案、チェンバロ製作は横田誠三氏が行うことになりました。
一方で、私も北大と深い、つながり(縁)があります。
私の祖先、大島正健は札幌農学校の第一期生で、クラーク先生より直接教えを受けた人です。
1877年、クラーク先生が札幌を去るにあたって語った「Boys be Ambitious!」の言葉を「少年よ、大志を抱け!」と訳し、後世に伝えました。大島正健著「クラーク先生と弟子達」という本に、当時のことが書き記してあります。
このように私と関係のある北大で、しかもそれを象徴するポプラで作られたチェンバロを演奏出来ますことに、深い感慨を覚えます。
水永 牧子
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北大表敬訪問
(左)北海道大学総長 中村 睦男氏
(右)北海道教育大学旭川校教授 市川 信一郎氏

クラーク博士の肖像と

ポプラ並木の前で

北海道大学構内 クラーク像の前で
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<関連記事>(2005.1.17読売新聞掲載)
昨年9月の台風18号で多数倒れ、再生作業が進む北海道大学(札幌市北区)の
ポプラ並木の倒木が、バロック音楽で使われる鍵盤(けんばん)楽器チェンバロに
生まれ変わることになった。
北大は、並木の記憶が美しい音色でよみがえると期待し、完成後は記念演奏会を
開くことも検討している。
チェンバロはピアノの前身で、16―18世紀のヨーロッパでは、外側の素材として
ポプラが使われた。
これを知る学外の音楽史研究家から、「倒れたポプラを使ってはどうか」と北大に
打診があり、並木の再生・活用に取り組む農学部の平井卓郎教授らが、埼玉県
滑川町のチェンバロ製作家、横田誠三さんらに依頼した。
ポプラは、台風で51本のうち19本が倒れ、8本が傾いた。北大は昨年10月、倒木のうち、
状態のいい7本(直径80センチ、長さ3メートル)を提供し、北海道旭川市内の製材会社で
加工したところ、楽器用の材料には不向きな倒木から「奇跡的に」(横田さん)チェンバロ
3台分の材料がとれた。春の雪解け後に乾燥させてから、埼玉で製作に取りかかるという。
乾燥させたポプラの状態を見ながら慎重に製作を進めるため、完成には1年以上かかる。チェンバロを支える足の部分にも、この台風で倒れた北大構内のニレを使う。
価格は輸送費を含めて1台200万円程度になりそう。北大は、「何とか1台を購入し、
倒れてから2年後の2006年9月には、コンサートを中心とした記念イベントを開きたい」と
完成を心待ちにする。
☆写真提供:ポプラの樹の下で
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現在、北大博物館に保存されているチェンバロです。
(2006年2月13日記)
(おわり)
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